山口修司の中辛鉄道コラム”ぶった斬り!!”

新進気鋭の交通評論家が、日常の鉄道ニュースに対し、独自の視点で鋭く切り込みます。

鉄道再改革待ったなし、30年間の軌跡と展望を総括せよ

ちょうど30年前の4月1日に、年間2兆円の赤字体質だった旧国鉄が分割民営化され、JRグループが誕生した。30年の間に、JR本州3社は完全民営化を果たした。一方、“三島会社”のうち、JR九州は株式上場にこぎつけたが、JR北海道JR四国は厳しい経営下にあり、特にJR北海道は、このままではあと3年で資金ショートになるという、極めて厳しい経営環境下にある。

 

私は、分割民営化が誤りだったとは考えていない。分割民営化の妥当性は、本州3社の採った戦略の違いを見るとよい。JR東日本は、特急電車の充実と新幹線の利便向上いう戦略を採り、鉄道需要の掘り起こしに成功した。JR東海は、売り上げの9割を担う東海道新幹線の速度向上に専念し、“のぞみ”を中心とした利用客の増加を今日まで続けることに成功した。一方、JR西日本は、関西圏在来線の速達性向上により、競合私鉄との競争に勝ち、乗客数の増加に成功した。これらの地域間競争により、本州3社については、赤字体質からの脱却どころか、完全民営化まで成し遂げることができた。これは、この“粒の”大きさでの“分割”民営化が適切であったことを示しており、国鉄改革は一定の成功をしたと言って良い。

 

一方、JR北海道に目を向けると、約半数の路線が存続の危機にある。全ての路線を維持すべきとは思わないが、北海道の気候を考慮すると、“幹線”(“〜〜本線”)の存続は必要だと考える。鉄道は、大雪でも機能できる唯一の交通モジュールだからだ。幹線が廃止されれば、大雪の季節に、北海道民は移動の権利という基本権を失う。私は、JR北海道は列車の運行に専念し、インフラ維持は国・北海道が負担するという形での公営(いわゆる、“上下分離”)にするべきだと考えている。JR東日本に強引に合併させるなど、絶対にやってはならない。この国は社会主義国ではないからだ。これは、JR四国についても同様である。

 

今後を考える際には、なぜ、ここまで利用者が激減したのかに目を向ける必要がある。少子高齢化や地方過疎化、IT革命による交通需要そのものの減少などもあるが、JR北海道JR四国に関しては、高速道路網整備の影響が大きい。国の役割・責任を追究する事も必要だが、地方でもどんどん自動車専用道路を作っている。これではクルマに利用が流れるのは必然である。そこで“鉄路活性化”を叫ぶのは、言っていることとやっていることが一致しない。即ち、国はJR北海道・四国の管理者・株主でありながら、同時にこの二社の首を真綿で絞めることを続けてきたのである。今後は、鉄道・車・航空機等で整合性の取れた一貫した交通政策が必要である。