山口修司の中辛鉄道コラム”ぶった斬り!!”

新進気鋭の交通評論家が、日常の鉄道ニュースに対し、独自の視点で鋭く切り込みます。

北海道新幹線の確実な赤字とJR北海道の解体可能性

東洋経済オンラインが、鉄道専門誌である「鉄道ジャーナル」と連携し始めて久しいですが、今月19日発売の鉄道ジャーナル国鉄改革 まもなく30年」なる特集記事の抜粋版(”「並行在来線」が将来直面する深刻な問題ー人材と財源不足で"第2の国鉄改革"必要か”)が、昨日のことで恐縮ですが、アップされました。国鉄改革について議論すると、分厚い書籍が何冊もできてしまうので、(例えば、「未完の国鉄改革」「なせばなる民営化」「国鉄改革」(下写真参考)など)稿末から引用しましょう。

新幹線網が今後も拡充して並行在来線がますます増え、その維持が政策への依存度を強めるほど、国の支出は増す。あたかも新たな国有鉄道が誕生するようなものである。それが負担で耐えられなくなったとき、地方のローカル線から整理されていくという第二の国鉄改革というべきシナリオが再現され始めている。

本当に望まれる鉄道や交通システムはそのような姿なのか、持続可能な形にするには何を取捨選択するか、これから否が応でも議論せざるをえない。作った分の負担は増える――。その自明の理を改めて問う必要性が、整備新幹線並行在来線によって露呈してきたと考えられる。

はっきり申し上げると、そんなことは20年前から分かっていたことで、(例えば、先日鬼籍に入られた、交通評論家の角本良平氏は、90年代からこの議論をしており、『JRは2020年に存在するか』(2001年出版)という著作まであります)もともと赤字でしかも単線の路線に、余計に手のかかる複線(新幹線)を追加したら、全体として赤字が膨らむのは、中学生でもわかることです。昨年開業した北陸新幹線が好調なため、目が霞みがちですが、並行在来線の負担は基本的に税金です。これを運賃上乗せで対処したとしても、問題の根本は解決しません。負担者が納税者か利用者かの違いでしかないからです。今週土曜日に開通予定の北海道新幹線は、新幹線ですら赤字と見込まれています。(「北海道新幹線の平均乗車率はたったの25%!?」という記事が今日リリースされています)なぜ、課題山積のJR北海道が、赤字確実の新たな投資に乗ったかといえば、”並行在来線の経営分離”というマジックで、営業赤字幅が圧縮できるからにすぎません。既に遅すぎる感はありますが、”作った分の負担は増える――。その自明の理を改めて問う”ということを、国民的議論の俎上に乗せましょう。国鉄だけではなく、日本の鉄道全体が破綻する前に。